こんばんは。
昨日ぐらいからメッチャ寒くないですか

?
風邪ひき気味どす

。革ジャン防寒性能低いっす。それでもフリースやダウンに頼らない主義です(笑)。
今日は実に半年以上に渡って企画してたことがとうとう実現しちゃったんで、嬉しくてご報告致します。
多分日本国内でやってるとこ無いと思います。着手したのは今年の4月(
過去記事はこちら)ですからね。長かった。
レザーって元々は牛馬の皮膚だよ。お肉の副産物で命のかけら。無駄にするなんてあり得ないでしょう?牛一匹まるまる部位ごとに適した鞣し方をしてやった!!
今回久しぶりにレザーそのもの、皮革素材に
日本経年変化協会として企画してみました。それがこちら。

これで牛まるまる一匹分なのだぁ~

。
部位ごとにカットしてそれぞれに適した鞣し方・仕上げを行っております

。隙間があるのは部位ごとにカットして部位ごとに異なる鞣しを施したので縮んでるんです。読み通りの素晴らしい出来栄えに満足っす

。
おさらい①
そもそも半裁って鞣しの生産効率良いけど、捨てる部分が発生するのは必然的な技法だと思う
現在国内の皮革で流通してるのはレザーは「半裁」と言う単位で売買されております。半裁と言うのはコレっす。
頭からお尻まで背骨を中心に真っ二つに裁断したレザーを半裁と言います。
背骨で真っ二つにカットしてから、塩漬けにして鞣し工場であるタンナーに持って行って鞣しを行います。
職人さんとかレザークラフトを嗜んでいる方々は実感されていると思いますが、半裁でお腹の部分であるBellyと脚のLegは使えないと言う事実があります。
レザーと言うのは天然素材であると同時に繊維素材であります。
部位によってその繊維は異なるんですよ。人間でもそうですけど、お腹って皮膚が一番薄い部分ですよね?
鞣すと言うことは牛馬の皮膚を腐らないように防腐剤(タンニンやクロム)を入れて腐らないようにして革にすることです。
部位によって鞣しが出来ている部分と出来ていない部分があったらダメなんで、一番分厚い皮の部位に防腐剤を調整するので、厚みの無いお腹の部分は縮んでしまって波打ってるので職人さん達にとって使い物にならないと言うのが現状です

。
おさらい②ヨーロッパのレザーは部位ごとに販売するのでまだ効率的だけどまだお腹のBellyが・・・
「半裁」と言う単位は戦後、アメリカの生産性があらゆる分野で取り入れられたもので、やってるのは日本とアメリカぐらいのもんかと。ヨーロッパのレザーはこんな感じで丸々鞣しております。

丸々鞣してから青の線の部分でカットして部位事に販売してます

。
レザー素材を購入する側としては無駄はないんですけどね。
でも両サイドのお腹のBellyの部分は波打ってる部分が多く、廃棄する部分があります。
じゃぁ~部位ごとカットしてそれぞれの部位に適した鞣し方をすれば、無駄も無くなるし、品質も向上するやん!!
そ~想ったわけですよ(笑)。
現状「半裁」が流通してる日本で言うのは簡単でも実現するのは難しいこと。
今年まで一緒にやってた姫路レザー有限会社でも実現できない。姫路レザーは脱クロム製法の品質安定だけでいっぱいいっぱいでしたから(笑)。
でも諦めきれない。
脱クロム製法の理論は分かってさらに高品質の脱クロム製法レザーである
Pateも作れるタンナーさん出てきた。
次は鞣しからこの手法をやりたくて仕方がない・・・。
やりたい事は実行したくて仕方ないので新しいメンバーで挑戦したのが今回です。
半裁主流の日本で丸々牛1頭の原皮調達どうすればい~の??訳わからんお願いで入手しました。
「半裁」がほぼ100%の流通の日本で丸々牛1頭の原皮なんぞどこで調達すれば良いの???商社さんにお願いしても門前払い
。 日本最大の皮革産業都市である兵庫県姫路市で直接挑戦しよう。姫路レザー有限会社の元副社長の北口氏は懇意にさせて頂いておりましたので、ご自宅に伺ってお願い。
『欲しい、欲しいの。牛1頭丸々の原皮が欲しいのパパお願い~。何とかしてぇ~。』
子供の駄々っ子の如く、お願い(笑)。
北口パパは唸りながら探してみると・・・。
後日電話が入って
「手に入ったぞ!!ワシ今日は忙しいから嫁さんに運ばせるわ!!」
やったぁ~

。パパ大好き

。
奥様のお手を煩わせて申し訳ございません

。
当日ママまだかなぁ~って待ってると、北口ママなんと自分の愛車の軽自動車で牛丸々1頭の皮を運んできましたぁ~。
北口ママもいっつも応援してくれるのですが、ママの可愛い軽自動車の車内が確かに臭い

。
運んで頂いたけど「臭ぇ~。ママの車臭ぇ~。窓開けときましょう」(酷いホントにひどくてすみません)。
で牛1頭丸々やってくれるタンナーさんは・・・。
タンナーさんもやったこと無い事をお願い。お願いはみんなでするもんだ。
で、牛1頭丸々部位ごとに鞣してくれるタンナーさんは存在するのか???普通であれば、どこも無理です。
相方の鞄職人椎名賢君も呼び出して来てもらってみんなでお願い。
北口ママと椎名君と私の三人でお願い。お願いはみんなでするもんだ

(笑)。
良い子の皆様は真似しないよ~に。

森本尚製革所の森本先生にお願い。森本尚製革所は鞣しを専門で仕上げはやっておりません。ただ、鞣しの技術は姫路でNO1だと思います。
「じゃぁ~やってみましょうかぁ~。」と言う声を頂くなり、超細かい要望を(笑)。約束だよ。指切りげんま~んってね。
で仕上げは姫路トップクラスの仕上げ専門のアルファレザーさんとセナレザーさんにこれまた駄々こねてお願い(笑)。

皆様の強力を得て出来上がったのがこちら。
どうですか?
牛丸々1頭

それでは各部位について。
①ショルダー(肩)
②ベリー(腹)
③ベリー(腹)
④ベンズ(背中・胴体)
の4つの部分で異なる鞣しと仕上げを施しました。
ダブルショルダーでしっかりした肉厚の鞄が作りたいので厚みのあるソフト天然シュリンクに
まずは、①のショルダー(肩)部分のレザー、左右両肩なので日本では”ダブルショルダー”と言われる裁断方法になります。
①ダブルショルダー
鞣し : 脱クロム製法
仕上げ : 染色天然シュリンクソフト
カラー : ネイヴィー
企画 : 日本経年変化協会
鞣し : 森本尚製革所
仕上 : アルファレザー
牛馬の皮膚で一番厚みのある部分がショルダー(肩)です。分厚い1枚革のベルトに使われます。
みっちり詰まった繊維は鞄にしたらメッチャ頑丈になるはず。カバン用に会えて厚みのあるソフトかつ天然シュリンクに仕上げました。
シュリンク仕上げにして並べてみると想定以上に革が縮んでいることが分かりました

。
だから天然シュリンクのレザーは高価なんですね~。
もっとも使いやすい部分のベンズはやはり経年変化を見越した染色のスムーズレザーに
④のベンズ(背中・胴体)部分。
普通半裁で購入しても、この部分でレザーアイテムを製作します。レザーで分厚くもなく薄くもなく一番よい所、鞄はもちろん革小物やブーツなんかも製作できます。

④ベンズ
鞣し : 脱クロム製法
仕上げ : 染色スムース
カラー : ライトブラウン
企画 : 日本経年変化協会
鞣し : 森本尚製革所
仕上 : アルファレザー
普通に余計なことせずにカラーも何作っても良くなるようにライトブラウンのスムース。
フルタンニンにしても良いですが、私は最近脱クロム製法こそが注目する鞣しだと思うのであえて脱クロム製法で

。
海外にない日本独自(とりわけ播州地方)の鞣しで個人的に大好きです。フルタンに拘る職人さんもヌメ革と区別が付きませんでしたからね(笑)。一番美味しい部分を無難な仕上げにして何を製作しようか年末年始ゆっくり考えます。
通常廃棄されるベリー(腹)。これで紳士用のかっこ良いスーツ用のベルト製作するんだい!!
②、③は牛のお腹でベリーです

。
「半裁」では凹凸が激しく多くのレザー職人が使わず廃棄してしまう部分。本企画の目玉です。
予想どおり、ベリーに合わせた鞣しを行うと全然使えるレザーになりました。
スーツ用のベルト欲しいし、と用途が決まっていたので、仕上げはかなり綿密に打ち合わせして仕上げました。
まずは②の部分。

②ベンズ
鞣し : クロム鞣し
仕上げ : ヌバック
カラー : ナチュラル
企画 : 日本経年変化協会
鞣し : 森本尚製革所
仕上 : セナレザー
ベルトは貼りあわせた高級仕様にしたい(笑)。
ベルトの裏側はヌバックにしたい(贅沢)。
ベリーは耐久性が弱いと言うのが定説なので、あえてクロム鞣しで慎重に仕上げていただきました。
出来た感じ非常になめらかな上質なヌバックでベリーと言われないと分からんよ。きっと。

③ベンズ
鞣し : クロム鞣し
仕上げ : ガラス
カラー : ブラック
企画 : 日本経年変化協会
鞣し : 森本尚製革所
仕上 : セナレザー
そしてベルトの表側は上品になるように、ガラス仕上げ(厳密にはセミガラス)でエナメルのような艶出しを行わずにレザー本来の経年変化が楽しめるように艶をおさえています。これがベリーですよ

。
部位が異なると言うことは、皮革素材の繊維が異なると言うことで同時に鞣してしまうと、繊維が弱いところはダメになってしまう。
だからこそ、無駄なくレザーを鞣すには部分ごとに最適な鞣し剤や工程を行うことによって無駄なくレザーの魅力を存分に引き出すことができる。そう思ってました。
今回の取り組みは業界から多数のお問い合わせを頂いておりますが、うちでレザー販売は行わないので販売する業者が確定したらそこから販売されると思います。ですが、まず使ってみないと。年明け一気にやっちゃいます。
謝辞
今回の企画は私一人では到底実現できるものではありませんでした。
やはり兵庫県姫路市の専門家と熱いミーティングの末、実現できたものです

。今回ご協力頂いた皆様に感謝申し上げます。
【ご協力頂いた皆様】
①原皮調達
北口俊一(姫路レザー有限会社 元副社長 通称:北口パパ)
北口朋子(北口さんの奥様 通称:北口ママ)
②アドバイザー
椎名賢(鞄職人/Specialite & Entree製作総責任者)
③鞣し
森本尚製革所
④仕上げ
アルファレザー
セナレザー
みんな本当にありがとう
