こんにちは
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日本経年変化協会です
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体調不良も徐々に回復
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しかし、家族内に順調に風邪が感染して家族の中で感染源として扱われております
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先のブログでの
日本経年変化協会オリジナル皮革素材レーベル
『Marchais』から
『Pate』と
『épice』を発表させて頂きました。
早速多数のお問合せを頂きまして、嬉しく思います
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販売体制準備中ですので、今しばらくお待ちいただきたく思います
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それだけ、素材を探している作り手さんがいらっしゃると思うとワクワクします。
素材に関しては実はもう一つプロジェクトを企画して実践しているので、ご報告したいと思います。
”平成の大改修”を終えた世界遺産『姫路城』を要する姫路は日本最大の皮革産地です
今回のプロジェクトは、実験段階ですが協力して頂けるのは兵庫県は姫路の方々です。
姫路といえば、話題になっている5年に及ぶ”平成の大改修”を終えた世界遺産
『姫路城』です
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実は一般公開の前の内覧会にご招待して私、いち早く
『姫路城』の天守閣に登城しました
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ウヒョ~
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真っ白な天守閣は3年ぐらいすると真っ白じゃなくなってしまいます。今だけですよ!!
5年ぶりの世界遺産公開を記念して姫路は色んなイベントが目白押しでございます
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なかでも
大相撲の姫路巡業が実現しました
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これまた、ご招待頂けました
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実は私大相撲ファンなんですが、実際生で観たことの無いモグリ野郎だったので、感激
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しかもメッチャえ~席で関取達がめっちゃ近いし、しかも正面席
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怪我で横綱鶴竜関と大関琴奨菊関、人気力士前頭の遠藤関は見れませんでしたが、横綱白鳳関、日馬富士関を生で観れてもう昇天
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そんな、世界遺産のある姫路市ですが、実は
日本最大の皮革産業都市なんですな
。
今日でも日本で精製されるレザーの7割以上を兵庫県の播州が占めています。姫路はとりわけ平安時代から革の精製が行われていると文献も残っています。
お城や大相撲でご満悦でしたが、今回の目的はとある実験であります。
ヨーロッパ方式で革を精製すれば日本の技術で最高品質のレザーができあがるはず。
実はこれ最近めっちゃ思ってました。
まずは皮革の基礎知識からお付き合い下さい。
「何故??」
レザー職人の大半からヨーロッパ皮革を指示する声が
色んな商品企画プロデュースをして様々な専門の職人さんとコラボして来ました。
素材も国内の有名タンナーの皮革や海外の皮革を扱ってきました。その際
「イタリア、フランスの海外レザーが使いやすいし、品質が良い。」
そんな評価が上がってきました。
何故ヨーロッパのレザーが良いのか??
日本の皮革と何が違うのか??
ここ数年私が悩んでいた事なんです。
鞣しの技術は日本と世界は遜色ない。むしろ日本の方が上なんでは??
ヨーロッパの皮革の品質が評価されるのは何故か??
この課題に直面した時私は
”鞣(なめ)し”に差があるのでは??と考えました。
鞣しは牛馬などの皮膚(Skin)に防腐処理を施して皮革(Lether)に精製する工程のことです。
防腐剤をタンニン(植物成分)を用いると
タンニン鞣し。
防腐剤を化学薬品のクロム酸を用いると
クロム鞣し。
となる訳です
。
タンニン鞣し、
クロム鞣しを問わずとりわけ一般的な技法は
ドラム鞣しです。
ドラムと言う機材を使って、遠心力で防腐剤を皮革繊維に馴染ませる手法が一般的です。
でっかいドラム型洗濯機ですね
。比較的短い時間で大量に皮革を精製できることがメリットです。
次に、
タンニン鞣しならではの昔からの技法で
ピット鞣しと言う技法があります。
これはピット槽と呼ばれるデッカイ水槽に防腐剤であるタンニンを入れて水溶液を作ります。
濃度の異なる水溶液に順番に皮革を漬け込んでいくと作業を経て、最低3ヶ月ほど精製するのに時間を要します。戦前はこの手法が一般的でしたが、戦後
ドラム鞣しが普及して
ピット鞣しはほとんど見られなくなりました。日本を代表するタンナーである
栃木レザーや
新喜皮革はこのピット鞣しを採用しています
。
ピット鞣しのメリットは遠心力ではなく、自然に皮革繊維にタンニン剤を加えるため、きめ細かい鞣しが行われると言われております。反面、場所が必要なことと精製に時間がかかることから、大量生産には不向きでコストも高くなることが挙げられます。
当初、私もタンニンの
ピット鞣しに拘りました
。しかし次のような現実を知りました。
「ヨーロッパのほとんどがドラム鞣しを採用している!?」
日本の伝統的な
ピット鞣しがヨーロッパの
ドラム鞣しに負けるってか???
正直、この現実に直面して皮革素材の企画プロデュースは一時断念(ギブアップ
)しました。
ま、それから
姫路レザー有限会社の脱クロム製法による
アルコタンニンレザーの企画をすることになって、さらに皮革素材の知識を深め、さらに品質改良を加えたものが
日本経年変化協会オリジナル皮革素材レーベル
『Marchais』からリリースするものが
『Pate』なんですが、原皮や鞣しが云々ではなく、根本的な事に疑問を感じました。
日本とヨーロッパの違い、それは工程や仕上げの問題ではなく、そもそもの皮革の流通のさせ方に問題があるんでは??と。
当たり前だと思っていた「半裁」と言う流通システム。これは日本とアメリカぐらいなもんだった
「半裁(はんさい)」とはご存知だろうか??
つまり牛馬の革を半分に裁断したものを一枚の革として市場に出荷しているのです。
つまり1頭の牛で2枚の革が採れると言う計算になります。言い換えると半裁2枚の革で牛1頭分と言うことです
。
これが
「半裁」ってやつです。
頭からお尻まで真っ二つに裁断した状態です。上の画像では右側が頭になります。またレザーの価格は
ds(デシ)と言う単位で価格が決定されます。
10cm×10cm=100平方センチメートル=1ds
つまり10cm正方の正方形の面積で価格が決定されると言うことです。
例えば、
姫路レザー有限会社の
アルコタンニンレザーは1dsが100円です。
「半裁」で230dsだとすると
「半裁」一枚23,000円と言う訳です。牛とか馬は生き物ですから、人間と同じく大きい小さいがあります。
「半裁」で300dsとかなると一枚30,000円となり、革一枚で7,000円の価格差が生じることになります
。
この場合問題になるのが
「革一枚で何個製品ができるのか??」が重要になります。これを
歩留まりと言います。
例えば、デシ単価が同じ100円として
「半裁」が23,000円の革で鞄が2個製作できた場合鞄の革材料代は単純に11,500円。
「半裁」が30,000円の革で鞄が3個製作できた場合鞄の革材料代は単純に10,000円。
同じ革で同じ鞄を作っても1,500円の材料代に差が出ます
。
歩留まりが良い悪いでも材料代に差がでてしまうので、デシ単価が同じ場合職人さんは大きな革を好む傾向にあります。
モノを企画するのはこんな事まで考えるんです。実際色々やってみて次のような事が分かりました。
ヨーロッパの革は無駄なく使い切る。日本の皮革は「使えない部分」が発生する。
これ何で???
と思っていたら当たり前だと思っていた
「半裁」に問題があると気付きました。半裁って革をよく見ると部位別にこんな感じに分かれます。
「半裁」のまっすぐな切り口が背骨の部分で背割と行ってここで裁断されています。
部位別にこんな感じに分かれてます。お肉でもロースとかハラミとかありますもんね
。革も同じ。
職人さんが「使えない」と言う部分はBELLY(お腹)Leg(脚)の革なんです。
「半裁」230dsのうち120ds程がBELLYとLegになるので、1ds100円だとすると1,200円ほどが使えない部分になります。
「すげ~革損してんじゃん!!」
でしょ?勿体ないでしょ??なので、比較的マシな部分使ってコンドームケースとかキーホルダーにしてたんですよ。
後、ちょっとレザーに詳しいショップの店員さんとかに
「Legは鞄のハンドルに。BELLYは鞄の底になるんじゃないですか。使い方が悪いんですよ。」
な~んて言われたことありました。
それは、現場を知らない方の間違った情報の解釈。ハンドルや鞄の底に使うのはヨーロッパなんですよ。BELLYは凹凸があって使いにくいんですよ。作品にしても綺麗でない。
そう、この
「半裁」こそが問題だと考えるようになりました。
「半裁」を取り入れてるのは日本とアメリカぐらい・・・。
ヨーロッパの皮革は違う裁断方法していました。
ヨーロッパは縦割りではなく、横割り。部位が均一で理屈に叶っていました。
ヨーロッパは
「半裁」なんぞ存在しません。
裁断の仕方そのものが異なっておりそれは非常に理にかなっていました。ヨーロッパは
上の画像のようにレタン(カット)しています。つまり、ベンズは全てベンズ、ショルダーは全てショルダーと部位ごとに購入できるため、ほとんど余すことなく、レザーが使えるのです。
で問題のBELLY(腹)はどうなっているのか?
BELLYはBELLYはだけで仕上げをしてやると、ちゃんと使える皮革素材になるのです
。
LOUIS VUITTONなど有名ブランドのベルトや鞄のハンドルはなんとBELLY(腹)が採用されているそうです。
つまり、
「肩や背中のぶ厚部分とお腹の薄い部分を一緒に仕上げをすることに問題がある。」のです。
じゃぁ~、日本の鞣しの技術が世界に劣らず、さらに世界的にレベルが上なら、ヨーロッパ方式で仕上げを行うと、さらに良いものができるやん??ってなりますよね?
姫路の皮革エリアは分業制。かって日本もヨーロッパ方式を採用していた名残です
兵庫県姫路市の皮革産業エリアは現在でも80社近くの皮革関連の工場が立ち並んでいます。
私も鞣しを行うタンナーが全て鞣しから仕上げまで行っているかと思っていましたが、姫路の現状はそうではありません。
・原皮を扱う原皮屋さん。
・鞣しを行うタンナー(下地屋さんと言った方がしっくりくる。)
・仕上げを行う仕上げ屋さん(染色や型押し、様々な加工)
播州でも他のエリアになると、仕上げ屋さんで全ての仕上げができるところが一般的ですが、姫路は専業で完全に分業制になっています。
実際に
「半裁」と言う単位で扱うようになったのは戦後らしいので、戦前はヨーロッパ方式のように丸革で鞣してから、部位ごとに仕上げを行っていたそうです。ならできるはず??
しかし、それは戦前の話しで現在で昔のやり方でできるのか??
そんな時救世主・メシアが私の前に現れました
。
姫路で新しい試み、『Total Leather Support.co.Ltd』発足
日本経年変化協会設立以来、ずっと私を応援してくれている方が居らっしゃいます。
今回の私の突然の
「やりたい」
宣言を快く支援してくれている方が、
Total Leather Support.co.Ltdと新たに組織を立ち上げて応援して頂けることになりました
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有限事業組合石垣皮革代表 元・
姫路レザー有限会社取締役副社長
革の里事務局長の北口俊一氏です
。
姫路レザー有限会社退任後を
Total Leather Support.co.Ltd発足。姫路の地場産業である皮革産業の活性化に尽力を尽くされております。今回私の提案も
「おぉ、面白そうやなぁ~。」
と快諾して頂きました
。
んで、もう一人は盟友の
Ken Shiina Design Laboratory代表の椎名賢氏。
「いや、忙しいってオレ・・・。けど面白そう。え?え?なんて?今やるの?」
もちろん、今やりた~いすぐやりた~い
。
作り手の意見もメッチャ重要やん!!力を貸してよ。
ってことで快諾(笑)。
けどね。いざやろうと思ったら、90%以上がで
「半裁」流通しているので、丸革の原皮ってのがどこから入手したら良いのか分からない
。北口さん。
「よっしゃ任しとけ、何とか探してみる。」
「仲間もなんとか集めてみる。」
おぉ、頼りにしてますぅ。
何とかなるんかなぁ~??
何とかなれば良いなぁ~??
ホルスタインの原皮でいよいよ実験開始~そして奥様ありがとう~
一週間もしないうちに北口さんから電話あり。
「丸革の原皮一枚分けてもろうたで。ホルスタイン(乳牛)や。脱クロ(脱クロム製法の略。姫路の方々はチョコクロのノリでこのように表現する(笑)。)
でえ~んやろ?いっぺんクロムで鞣してまた連絡するわ。」
流石に早いぜ!!北口さん
。
脱クロム製法と言えば、姫路で最高品質の下地を精製されている
森本尚皮革さんです。ちょっと特殊なんでぜひご意見も頂きたいので、北口さんにアポイントを調整して頂きました。クロム鞣しで水分をある程度乾かしてから
森本尚皮革さんに持ち込んで相談する段取りです。
当日はそりゃワクワクしました
。
椎名賢氏を伴ってワクワク向かいました。途中北口さんから電話があって
「オレ、忙しいから時間あけられへんから、嫁に持って行かすから頼むわ~。」
え?え?北口夫人が
??
奥様もいつも応援して私の事を気にかけて頂いております。可愛い専業主婦の方が丸革とか運べるのかな??
場所に到着すると、小柄な奥様が普通の主婦の方が乗る軽自動車のトランク開けて
「ヨイショヨイショ」やってる・・・
。トラックだと思っていたので、
「普通の軽自動車やないか~い(笑)」
と一発突っ込んでから
「お、奥さ~ん。僕達にお任せを~。」
フルリクライニングで軽自動車一杯になってる
。クロム鞣ししたウエットブルーですからね、湿気た牛1頭分。主婦の運転する可愛らしい軽自動車に搭載するとは北口さん恐るべし(笑)
。
奥様のファインプレイもありまして、広げてみるとホルスタインの丸革は超デッカイ
。
ウエットブルーでも白くなってますな。
このデカさ。
工場の中でも広げられへんやん。
ここから、クロムを抜き取って、再度タンニン鞣しを施すのが脱クロム製法です。
企画の意図を森本さんに伝えます。レタン(カット)も特殊ですからね。
BELLYをどのように使いたいのか、作り手の職人からタンナーの皮革精製の作り手と直接打合せして頂きました。
次回はレタンした下地の確認です。
もう、皆様突然の私のワガママ企画にご協力頂き、感謝感激です。
日本のモノづくりは素材も含めて世界に負けるってことはないやろ??
と私は信じています。
いやぁ~楽しみです。
また皆様にも随時進捗をご報告致しますね。