こんにちは

。
日本経年変化協会です

。
いよいよ師走ですな。師匠が走るぐらいなんで、私ごときは手をパーにして日々全力疾走でございます

。
サンタさんには時間をプリーズ

したいです。
さて、さて今月号の
枻出版さんの
Ligtningはご覧になりましたか?

おぉ

。
BUCOの
J-24の表紙でレザーの経年変化特集ではあ~りませんか?読者の方々のレザーの経年変化に関する質問に応えるような形で誌面が構成されておりました

。私も
Ligtningは所ジョージさんが創刊したころからの読者でアメカジの教科書的な雑誌だと思っていましたが、今回の内容はふ~ん

と言った感じで驚きました。
・クロムレザーは経年変化しないのか?
・コンビネーション鞣しの経年変化について。
今の読者ってこんなマニアックなところまで知識を求めているのか(笑)?って。
どんな使い方したら綺麗なエイジングができるか?ってのは定番のニーズですが、素材の鞣しまで掘り下げるか?って。
かく言う私も追求しすぎて
日本経年変化協会たるものを発足してしまったのですが

。
誌面で解答がなされていましたが、
「クロム鞣しも経年変化すると思う。」ってちょっと曖昧なので、
日本経年変化協会と少し今回補足説明を勝手にしちゃいます(笑)。ちょっと長くなりますが、お付き合いを

。
そもそも鞣し(なめし)って何やねん?
めっちゃ基本から。鞣し(なめし)ってそもそも何やねんってとこから。
レザーって革の事ですが、元々は牛とか馬といった動物の皮膚でございます

。動物の肉を取った副産物であることが多いのですが、皮を剥ぎとった状態は
原皮(げんぴ)と呼ばれます。
この画像が
原皮です。毛がボーボー

の状態かつ血肉がついた状態のものを一時的に腐らないように塩漬けにして、取引されます。当然、このままではいずれ腐ってしまうし、死体のような悪臭があります

。皮(Skin)の状態です。
皮を腐らないように人工的に加工することが鞣しです。
鞣し加工を専門に行う業者のことを
タンナーと呼びます

。
よく専門雑誌に登場する
栃木レザーや
新喜皮革と言った業者さんはタンナーさんです。皮を腐らないように加工するのがお仕事ってことですね。
で、タンニン鞣しとかクロム鞣しって何やねん?
皮(Skin)を腐らないように加工して革(Leather)にすることを鞣しと言いますが、加工するときに
鞣し剤(なめしざい)と呼ばれる薬剤を使います

。
鞣し剤には現在2種類あって、
タンニン剤と
クロム剤の2種類の薬剤があります。どっちのお薬をつかって鞣したかが
タンニン鞣しと
クロム鞣しになります。クロム鞣しをしてもう一度タンニン鞣しを行う手法を
コンビネーション鞣し(混合鞣し)と呼んでいます

。勿論、いずれもレザーなので、
Ligtningに書かれているように経年変化はします。
厳密に言うと経年変化の特徴が異なります。
タンニン鞣しと経年変化の特徴
タンニン剤って何かと言うと自然具体的には植物にある水溶性の化合物です。タンパク質と強く結合する化学変化があるので、動物性タンパク質と結合させるため、太古の昔から使われてきた
鞣し剤です

。日本ではミモザとか使われていますが、イギリスのタンナーさんでは樫の木を使ったりと様々です。
タンニン鞣しを行うと上の画像なような生成りの肌色の状態で仕上がります。これを一般的に
ヌメ革と呼んでいます。この状態で日焼けをしますので、飴色の経年変化が楽しめます。実際にはこの状態から染色して色をつけたりします。またはオイルを一杯含ませてオイルドレザーにしたりと色々加工しますが、それは
タンナーさんの加工しだいちゅーことですね。
で一般的に、レザーの経年変化好きはこの
タンニン鞣しのレザーを愛好する傾向にあるそうです。しかしながら、世界に流通しているレザーのうち
タンニン鞣しのレザーはたった2割りと言われています

。それは
クロムレザーの方が素材の品質として優れているし、安く大量に鞣す事ができるからです。
タンニンレザーを鞣す方法は、
ピット製法と
ドラム製法に別れます

。ピット製法とは写真のように
大きな水槽(プール)に
タンニン剤を溶かした濃度の異なる水溶液に
原皮を漬け込んで自然にタンニン剤を染み込ませていく手法で昔はこの手法しかありませんでした。現在では
ピット製法は非常に珍しい製法です。日本でも殆どがピット製法を行っている
タンナーさんは珍しく有名ドコロでは
栃木レザーが知られています。非常に肉厚な上質なレザーができあがりますが、デメリットも沢山あります。
①加工時間が長い(約三ヶ月かかる)。
②水槽で場所を取るので、製作量を増やせない。
③濃度の異なる水槽に順番に漬け込んでいくので手間暇がかかる。
④設備の維持費が高い。
なので、
ピット製法は近年では殆ど見られることがなくなりました。手間暇人件費がかさむので当然ピットヌメの取引は高価なものになります。これらを解消する方法が
ドラム製法です。
ドラム製法は写真のようなでっかい洗濯機

みたいなもので鞣す方法です。
タンニン剤の水溶液と
原皮をいれてぐるぐる回して遠心力を用いて
タンニン剤を皮に浸透させる手法です。これは約24時間で一度に100枚近く鞣すことができるので、今日のタンニンレザーの大半がこの
ドラム製法によって鞣されています。
ちなみに、よくピットヌメが繊維が詰まって良いとか書かれていますが、個人的にはあまり大差ないかと(笑)。
鞣した後、に革厚を薄くするため漉いたり揉みほぐしたり加工することが多いので、あまり関係ないことが多いです。実際の革の良し悪しは
原皮と
タンニン剤の種類だと最近感じています。
原皮の段階でAクラス~Eクラスまで別れて取引されています。ベンツならEクラスが良いですが、
原皮の場合はAクラスが最高品質です(笑)。革に傷や虫刺されが少なく脂肪も均一なものほど良質なレザーになります。
原皮が粗悪なもの(Cクラス以下)になれば
ピット製法でも満足できるものではありません

。
しょうしょう話が脱線しましたが、タンニンレザーのメリットとデメリットを特徴として挙げておきます。
【タンニンレザーの特徴】
①変色・変化が激しい(捉え方によっては革らしい)
②メンテナンスが必要(メンテナンスしないと割れたり裂けたりしちゃう)
③分厚くて重たい
④コバ(革の断面)が整うので切り目本磨きと呼ばれるコバ磨きの手法ができる。
人間の長所と短所と同じく、捉え方次第です

。
革好き、経年変化好きは変色・変化が激しいのが情緒的に嬉しい変態さん(笑)なので、タンニンレザーを好む傾向があるみたいです。
クロム鞣しと経年変化の特徴
クロム剤は塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品です。化学薬品は人工的に作れますからね。
タンニン剤より安い薬品なんで、急速に普及して現在では市場に流通している大半が
クロムレザーです

。ドラム製法で短時間に安くて大量に鞣すことができるので、日本でも戦後の高度経済成長期に併せて多くの
タンナーさんが
クロム鞣しに切り替えたと言われています。
クロム鞣しを行った原皮は水色の革になります。この状態を
ウエットブルーと呼びます。こっからなんじゃらかんじゃら染色したり加工していきます。ここで
クロムレザーの特徴をまとめると
【クロムレザーの特徴】
①変色・変化が控えめ。
②メンテナンスあまりしなくても丈夫。
③薄くて軽い
④耐熱性も高い
⑤コバ(革の断面)が整わないので切り目本磨きではなく、ヘリ返し手法を小物では採用する。
こうやって普通にみると素材としての仕様は
クロムレザーの方が優れているように思えますね
じゃ、コンビネーション鞣しは?
クロム鞣しの
ウエットブルーの状態で再度
タンニン鞣しを行う手法を
コンビネーション鞣しとか
混合鞣しと言います。
変色や変化を引き起こす要因が
タンニン剤にあるならば、
クロムの良いところと
タンニンの良いところを取り入れようとした手法ですな

。
Red Wingのようなワークブーツなんかの大半はこのが
コンビネーション鞣し多いです。
とはいっても8割り以上が
クロムの成分ですからね。
まぁまぁ変化するでぇ~程度です。ほとんどが
クロムの特徴です。コバも整わないことが多いです。
だからブーツの経年変化は時間かかるんです

。
じゃぁ、先に
タンニンで鞣して
クロムしたら
タンニンの特徴がほとんどやんか?って思いますが、クロムは硫酸ですからね。劇薬ですから、この順番はできないんです。
Ligtningでは
コンビネーション鞣しの
エアロレザーの革ジャンなんかが紹介されておりましたが、ブーツ着てるようなもんですから、そりゃハードですよ

。それを手懐けるのが好き

って人には堪らんのでしょう。それは人の好き好きですから

。
お洒落着かギアで鞣しによる経年変化を考慮すべき
経年変化と言ってもその特徴は様々です。
「日本経年変化協会は断然、タンニンレザー推しですよね?」
な~んて言われることが多いのですが、個人的にはあんまりこだわりはありません。
アイテムを服飾雑貨として捉えるかギアとして捉えるか?
これに尽きると思います。
例えば
BUCO。現行のモデルは
リアルマッコイズが展開していますが、1950年代の復刻で素材から当時に近いものを採用しています。当時はバイカーの防御服として革ジャンが作られていたのかもしれませんが、現在のコンセプトは服飾雑貨として捉えられているので、以下にヴィンテージの
BUCOみたいに経年変化することが重要視されています。なので、ホースハイドの
タンニン鞣しに拘っているので、強烈な経年変化を堪能できます

。
それとは対照的にアメリカの老舗
ラングリッツレザーは革ジャンブランドとして創業当時から数多くの名作を生み出していますが、創業当時と変わらないのは革ジャンを服飾雑貨としてではなく、ギアとして捉えていることです。単車乗りの防御服として捉えています。経年変化はヴィジュアル的には情緒を刺激しますが、耐久性から視点では劣化でもあります。なので、
ラングリッツレザーの革ジャンは単車乗りの防御服としての機能を長年継続することに重点を置いてモノ造りを行っているので、
クロムレザーを一環して採用しています。
ここで長くなりすぎたのでまとめると
【タンニンレザーの経年変化】
・変色・変形(革の凹凸など)が好きな人。
・比較的重量感のあるアイテムが好きな人。
・定期的なメンテナンスをするのが好きな人。
【クロムレザーの経年変化】
・変色・変形(皮の凹凸など)が好みでない人。(可動部の皺がクロムの経年変化)
・レザーは好きだけど重たいのは苦手な人。
・不精でメンテナンスを気が向いたときだけにしたい人。
・質実剛健なギアが好きな人。
って観点で考えてみる方が良いと思います。
タンニンレザーは比較的スピードエイジングできるけどメンテナンスしないと劣化してしまう。クロムレザーはじっくりと皺を刻み込んでいくと言った感じで。双方経年変化するけど、変化の特徴が異なるってことですね。
タンニン多めのコンビネーションがアルコタンニンレザー
タンニンと
クロムは
クロムの方が丈夫なのは現実です

。
通常のコンビネーションは
クロムが多めやし・・・。
タンニンの特徴はそのままにちょっとだけ
クロムの耐久性が欲しいやん。
仕方ない・・・。
ウエットブルーの
クロムを少しだけ残して
クロムを抜いてしまおう。それが
脱クロム製法
です。
この概念、昔からあったけどなんせ品質が安定しないので普及しておりませんでしたが、先日ご紹介して有志が集まり設立した
姫路レザー有限会社。私もプロデュースをさせて頂いておりますが、とうとう成功しました

。
私が僭越ならが、命名して商標登録を行いました
アルコタンニンレザーは
タンニンに少し
クロムが混じった理想のレザーでございます

。
なので、逆コンビネーションと言うか・・・。
見た目は完全ヌメ革です。職人さんがコバ磨くとピカピカに仕上がり驚かれました。
ヌメやけど普通のフルタンニンより丈夫ちゅーのが特徴です。
ってか品質にこだわり過ぎてしまう私。
原皮は全てAクラスの上質なやつでぇ~。
これ通常無理なんですよ。
それを可能にしてくれるのがこの御方。染色職人の小寺澤輝良社長(通称:サワさん)。
40年以上の大ベテランでございます。
生粋の播州人で興奮すると饒舌な播州弁が炸裂して時々私には理解不能・・・。
姫路・龍野エリアで長年ご活躍され、先日新聞にも取材されておられる御大でございます。
そんなサワさんが直接
原皮の買い付けを行ってくれております。しかもその場でAクラスの上質な
原皮を選別して。
なので、
アルコタンニンレザーの品質は半端ではございません。
ご興味のある工房さんや職人さんは是非ご一報を!